メニューは「目的」から逆算する

水泳のセット練習は、本数・距離・サイクル(出発間隔)・強度の組み合わせでできている。ただこれらを闇雲に組むと、練習の目的と実際の負荷が一致しない状態になりやすい。週6本泳いでいるのにタイムが伸びない、と感じるスイマーは、だいたい目的設計にズレがある。

この記事では、代表的な練習目的5つについて、1セッション(60〜90分想定)で成立する具体的なメニュー例を示す。真似するというより、自分のレベルに合わせて構成を調整する出発点として使ってほしい。

前提: メニュー表記の読み方

以下のメニュー例は、競泳の標準的な記法に従う。

  • 5 × 100m @ 1:40 = 「100mを5本、1分40秒の出発サイクルで」
  • 400m Pull = 「プルブイを使って400m」
  • IM Order = 「個人メドレー順(バタフライ→背→平→自由)」
  • Descend = 「だんだん速く」
  • Build = 「徐々に強度を上げる」
  • DPS = Distance Per Stroke(1ストロークあたりの進距離)

パターン1. スピード系(最大速度開発)

狙い: レース本番の最高速度を引き上げる。短距離で全力を出し、完全回復を取る構成が基本。

メニュー例(合計 ~2,000m)

ブロック内容目安時間
W-up400m Easy(200m Swim + 200m IM Drill)10分
Pre-set8 × 25m @ 0:45(Build 4本 → Sprint 4本)10分
Main 110 × 50m @ 2:00(All Out、完全休息)20分
Main 24 × 25m @ 1:30(Max Speed、ダイブスタート)10分
C-down300m Easy10分

ポイント

  • サイクルを長め(50mで2分など)に取り、毎本全力で入れる
  • 休息が短いと乳酸処理練習になり、スピード開発にならない
  • 本数は6〜10本まで。疲労でフォームが崩れたらそこで終了する
  • 週1回まで。頻度を上げるとCNS(中枢神経系)が回復しない

パターン2. 持久力系(有酸素ベース)

狙い: 中距離・長距離のベースとなる有酸素能力を引き上げる。中強度で長時間泳ぐ構成。

メニュー例(合計 ~3,500m)

ブロック内容目安時間
W-up600m Easy(300m Swim + 300m Kick/Drill)15分
Main 110 × 200m @ 3:00(Steady Pace、60〜70%強度)30分
Main 24 × 300m @ 4:30(Descend、最後は75%強度)20分
C-down400m Easy10分

ポイント

  • サイクルは「20秒前後の休息が残る」設定
  • フォームを崩さず、DPS を維持することが重要
  • 心拍は最大の70〜80%を目安に
  • 距離は2500〜4500mの範囲で、体力に応じて調整

パターン3. テクニック系(効率改善)

狙い: ストローク効率・ターン・スタートなど、技術要素を磨く。距離は短めでも集中力が求められる。

メニュー例(合計 ~2,000m)

ブロック内容目安時間
W-up400m Easy10分
Drill 18 × 50m Catch-up Drill @ 1:10(Stroke Count も計測)15分
Drill 26 × 50m IM Order Drill @ 1:1515分
Main6 × 100m DPS @ 2:00(ストローク数を毎本1減)20分
Turn Practice8 × 25m Turn Focus @ 0:4010分
C-down200m Easy5分

ポイント

  • 1本ごとにストローク数を数える。数字が悪化していたらフォームが崩れたサイン
  • ターン練習は壁を見ながら、5mフラッグを基準にターン準備を開始
  • 疲労した状態で雑なフォームを繰り返さない

パターン4. レース想定系(本番シミュレーション)

狙い: 自分のレース距離を、本番と同じペース感覚で完泳する力をつける。

メニュー例(100m自由形を目標にする場合、合計 ~2,500m)

ブロック内容目安時間
W-up600m Easy + 4 × 50m Build @ 1:1020分
Pre-set2 × 50m @ 2:00(レース前半・後半のペース分解)10分
Main3 × 100m @ 5:00(All Out、完全回復)20分
Secondary200m Easy → 4 × 75m @ 2:00(Race Pace)15分
C-down300m Easy10分

ポイント

  • サイクルを極端に長く取り、レースと同じ質のタイムを出す
  • ペース分析(前半・後半)を必ず記録
  • 本数は多くても3〜4本。目的は「本番と同等の強度で泳ぐ体感を得ること」
  • 大会2〜4週間前の練習に組み込む

パターン5. リカバリー系(疲労抜き)

狙い: 追い込みセッションの翌日、大会前日などに使う低強度の練習。

メニュー例(合計 ~2,000m)

ブロック内容目安時間
W-up400m Easy10分
Main800m Easy(IM Order で色を変える)20分
Drill4 × 100m Kick @ 2:30(フィン使用可)15分
C-down400m Easy + 200m Sculling15分

ポイント

  • 全体通して60%強度以下。心拍を上げない
  • 「泳ぎを忘れないため」「血流を良くして回復促進」が主目的
  • 週1〜2回、または大会前日に

週ごとの組み合わせ方

上記5パターンを、1週間にどう配置するか。例として週4回練習の中級者モデルを示す。

曜日種類
パターン2(持久力)
パターン3(テクニック)
パターン1(スピード)
パターン4(レース想定)または パターン2(持久力)
パターン5(リカバリー)または休み

原則

  • スピード系(1)と持久力系(2)は連続させない。疲労回復が追いつかない
  • テクニック系(3)は疲労が溜まっていない日に組む。フォームが崩れた状態でやっても逆効果
  • レース想定系(4)は大会前の仕上げ。日常的にはやらない

メニューをカスタムする視点

公開されている練習メニューをそのまま真似しても、自分のレベルと合わないことが多い。カスタマイズの基本は次の3点。

  1. サイクルを自分のベストタイムから逆算: 100mベストが1:30ならサイクルは2:00前後から
  2. 本数は疲労でフォームが崩れる一歩手前で切る: 1本多く泳いで崩すより、1本少なくて締める
  3. 強度表記は%で固定せず、RPE(主観的運動強度)10段階で捉える: 8以上が全力、4以下が回復

練習ログが次のメニューを作る

この記事で示したメニューはあくまで出発点。自分の練習ログ(本数・タイム・主観強度)を記録し続けると、どのパターンで自分が伸びるか、どこで頭打ちになるかが見えてくる。メニュー設計の上達は、結局のところ自分のデータと向き合う時間の長さに比例する。

参考リンク