フィンスイミングは「道具を選ぶ」ところから始まる

競泳と決定的に違うのは、フィンスイミングは道具が競技そのものを左右するところにある。モノフィンを買うのかビーフィンで始めるのか、シュノーケルは競技用を用意するのか、といった初期判断が、その後の練習内容を決めてしまう。

この記事では、フィンスイミングを始める人が最初に揃えるべき道具と、練習する場所の選び方を整理する。いきなり上級者用のモノフィンを買う必要はなく、段階的に揃えていくのが現実的だ。

道具選びの起点 — どの種目を目指すか

道具を選ぶ前に、先に決めておきたいのがどの種目を目指すか。JUSFの種目分類を踏まえて逆算すると、初心者の選択肢は主に3パターンになる。

目指す種目最小限揃えるもの難易度
サーフィス(SF)モノフィン+シュノーケル中〜高
CMAS Biofinビーフィン2枚+シュノーケル
J Biofin比較的自由なビーフィン+シュノーケル

J Biofin は道具規定が緩和されているので、最初に大会エントリーを目標にする場合の入口として機能する。JUSFは「国内のフィンスイミング普及の為に行われている『Jビーフィン』」について「道具の規定が緩く、気軽に参加できる種目」と位置付けている。

まずJ Biofinでプール競技の雰囲気に慣れ、物足りなくなったらCMAS Biofinやサーフィスに上げていく、というステップが一つの入門ルートになる。

最初に揃える3点セット

どの種目から入るにしても、フィンスイミングを始めるときに最初に必要なのは次の3点。

1. フィン(モノフィン or ビーフィン)

ビーフィン: 左右別々の足ヒレ。初心者はゴム製または柔らかめのFRP製から入るのが一般的。硬いフィンはキック力が必要で、慣れないうちは足首や膝に負担がかかる。価格帯は入門モデルで数千円〜2万円程度。

モノフィン: 本格的に速さを追求するならモノフィン。入門向けの練習用モデルは重量が軽めで、上級モデルはFRPやカーボン製で10万円前後まで幅がある。体格・足のサイズに合わないモノフィンはまともに泳げないので、試着できる専門店やクラブ経由で購入するのが安全。

2. シュノーケル

フィンスイミングで使うのは競技専用シュノーケル。JUSFが規定するとおり、内部に排水弁がなく、サイズと太さが定められている。市販のスノーケリング・ダイビング用はルールに適合しない可能性があるので、最初から競技用を買うのが結果的に近道。価格は数千円〜1万円程度。

3. 水着・ゴーグル

競泳と同様の競技用水着・ゴーグルで問題ない。ただし長距離種目(200m以上)を目指すなら、抗張力のある競技用水着を選んでおくと後で買い換えが減る。

応用で揃えるもの

基本3点に加え、種目によって次のような道具が必要になる。

  • ウェットスーツ: サーフィスのオープンウォーター種目や冬場の野外練習向け
  • スクーバ器材: イマージョン種目に必要
  • モノフィン用ブーツ: モノフィンを履くときの専用ブーツ(モノフィン購入時にセットで付属することが多い)
  • タイマー・ストップウォッチ: 練習タイム計測用
  • キックボード: フィンキック単体の練習用

イマージョンは潜水技能が前提になるため、初心者がすぐに取り組む種目ではない。最初はサーフィスまたはビーフィンに集中し、道具もそれに必要なものから揃えていくのが合理的だ。

練習する場所をどう確保するか

フィンスイミングの練習は専用の器具が使える環境が必要なため、一般のジムや公営プールでそのまま始められるわけではない。主な選択肢は3つ。

1. JUSF加盟のフィンスイミングクラブ

最も現実的な入り口。フィン持ち込みが前提の練習環境が確保されており、経験者・コーチがいて指導を受けられる。大会エントリーもクラブ経由で処理できる。JUSFの公式サイトからクラブ一覧を確認できる。

2. フィン持ち込み可能なプール

一部の公営プール・フィットネスクラブは、時間帯を限定してフィンの使用を許可している。持ち込み可能かどうかは必ず事前確認(モノフィンは見た目のインパクトから誤解されやすい)。

3. 海でのオープンウォーター練習

フィンスイミングにはオープンウォーター種目もあるため、海やダイビングポイントでの練習も選択肢になる。ただし安全管理の観点から、単独練習は避け、経験者と組んで行うのが基本。

始めるときによくある誤解

フィンスイミングに興味を持った人が最初にぶつかりやすい誤解を3つ整理しておく。

誤解1. 「モノフィンがないと始められない」

ビーフィンでもCMAS BiofinやJ Biofinで大会に出られる。最初からモノフィンを買う必要はない。

誤解2. 「競泳が得意ならそのままできる」

競泳経験者でも、キックで進む競技とストロークで進む競技は根本的に別。体幹の使い方・足首の柔軟性・ペース配分が変わる。最初は初心者として練習することになる。

誤解3. 「シュノーケルは好きなものでいい」

市販のスノーケリング用シュノーケルでは公式大会に出られない。最初から競技用を用意するのが無駄のない選択。

始めるまでの現実的なステップ

フィンスイミングを始めたいと思ったときの進め方をまとめると、次のような流れになる。

  1. JUSF公式サイトでクラブを探す: 自宅・職場から通える範囲のクラブを候補化
  2. 見学・体験: クラブによっては体験練習を受け入れている。フィンの貸出がある場合もある
  3. 最低限の道具を揃える: 体験後、本格的に続ける判断をしたらビーフィン+シュノーケルを購入
  4. J Biofin のマスターズ/公認大会にエントリー: 最初の実戦目標にする
  5. 道具を段階的にアップグレード: モノフィンへの移行は技術的に慣れてから

最初の数万円の投資で、未知のスポーツの世界が開ける。他の競技から移ってきた人こそ、水中で人間が出せる最高速度という感覚を一度味わってみる価値がある。

参考リンク