フィンスイミングとは|足ヒレで泳ぐ競技の全体像
水中を「最も速く進む」人間のスポーツ
フィンスイミングは、足ヒレ(フィン)を装着して水面・水中を進む競技。JUSF(一般社団法人 日本水中スポーツ連盟)の公式ページによれば、モノフィンを使った状態では競泳クロールの約1.5倍の速度が出るとされている。水中で人間が最も速く進むスポーツのひとつとして、ワールドゲームズ(第二のオリンピックと呼ばれる総合競技大会)の正式種目にもなっている。
日本での知名度はまだ競泳ほど高くないが、近年は国内大会も第38回フィンスイミング日本選手権大会・第15回ジャパンオープンマスターズ大会・第22回日本学生選手権大会と、長期的に大会体系が積み上げられてきた。この記事では、フィンスイミングの全体像を、競技の種類・使う道具・日本での参加方法を中心に整理する。
道具から理解する — モノフィンとビーフィン
フィンスイミングで使う足ヒレは、主に2種類に分類される。この違いを押さえると、競技を見る解像度が一気に上がる。
モノフィン(1枚フィン)
両足を1枚の大きなフィンに差し込み、イルカの尾のようにしならせて進む。JUSFの説明では「イルカの足ひれのような形状をしており推進力はビーフィンに比べてはるかに大きく、50メートルを13秒台」という世界トップの数字が示されている。素材はゴムブーツ+FRP(またはカーボン製)フィンが一般的。速さを追求する種目の中心的な道具となる。
ビーフィン(2枚フィン)
左右の足に別々の足ヒレを装着する形式。FRP製またはゴム製があり、形状・サイズが多様。JUSFによれば「推進力は30%向上」とされており、モノフィンほど極端な速度は出ないものの、一般のスイマーが取り組みやすい道具構成になっている。
シュノーケル
フィンスイミングで使うシュノーケルは、競技専用の規定品。内部に排水弁がなく、サイズと太さが国際ルールで定められている。市販のスノーケリング用とは別物と考えてよい。
競技種目 — 4つのカテゴリで整理する
フィンスイミングの種目は、大きく4カテゴリに分かれる。
| カテゴリ | 略号 | 内容 |
|---|---|---|
| サーフィス | SF | シュノーケルで呼吸しながら水面を進む種目。最もメジャー |
| アプニア | AP | 無呼吸で水中を潜って進む種目(50m) |
| イマージョン | IM | スクーバ器材を装着した潜水種目(100m・400m) |
| ビーフィン | BF | ビーフィン使用種目。CMAS版とJ版がある |
サーフィス(SF)
50m・100m・200m・400m・800m・1500m の6距離+リレー種目がある。短距離はモノフィン+ハイスピードの迫力、長距離はペース配分が鍵になる持久型レース。競泳でいえば自由形に近いポジションで、競技人口が最も多い。
アプニア(AP)
50m1本で勝負する潜水種目。無呼吸で潜ったままゴールまで進む。タイムより「完泳できるか」が試される面も強く、フィンスイミングのスピードと潜水技術の両立が求められる。
イマージョン(IM)
スクーバ器材をつけて100mまたは400mの水中距離を進む。呼吸しながら長い距離を潜る。潜水技能がある競技者向けの種目で、他カテゴリとは別レーンで競技される。
ビーフィン(BF)
ビーフィンを用いる種目。国際基準のCMAS Biofin は50m・100m・200m・400m+リレー。これに加えて国内独自のJ Biofin が存在し、JUSFによれば「国内のフィンスイミング普及の為に行われている『Jビーフィン』」は「道具の規定が緩く、気軽に参加できる種目」と位置付けられている。初心者が大会に参加する入口として機能するカテゴリだ。
統括団体の構造 — CMAS × JUSF
フィンスイミングの国際統括は CMAS(世界水中連盟)。JUSFは「世界水中連盟(CMAS)に、日本唯一の水中スポーツ代表団体として代表加盟を承認されている」と明記されており、日本国内のフィンスイミング・水中ホッケー・水中ラグビー・水中写真・フリーダイビングを一元的に扱う立場にある。
World Aquatics が統括する競泳・水球・飛込・アーティスティックスイミング・オープンウォーターとは別系統の国際組織である点に注意が必要。つまり、フィンスイミングは「水泳競技」のくくりに入ることはあるが、世界水泳選手権の中の一種目ではない。独立した世界選手権・ワールドカップが別途開催されている。
日本で参加するには
国内のフィンスイミング大会に出るには、JUSF加盟クラブに所属するか、大会要項の個人エントリー条件を満たす必要がある。代表的な大会は以下のとおり。
- フィンスイミング日本選手権大会: 国内の最高峰
- フィンスイミングジャパンオープンマスターズ大会: 年代別のマスターズ大会
- フィンスイミング日本学生選手権大会: 学生カテゴリ
初心者は、J Biofin 種目から始めることで道具規定が緩和されるぶん、エントリーのハードルが下がる。大会日程・要項はJUSF公式の大会日程ページに随時掲載される。
競泳からフィンスイミングに移るときの変化
競泳経験者がフィンスイミングに取り組み始めると、**「同じように泳いでいるのに、桁違いに速く進む」**という感覚に最初に驚く人が多い。50mを13秒台で進む世界記録レベルのスピードは、競泳の世界では考えられない数字だ。
一方で、ストロークを使わずキックだけで進むため、上半身の使い方・下半身主導の推進・ストリームラインの作り方の重心が競泳とは変わる。クロール・バタフライの延長線上にあるようで、実は専用のトレーニングを要する別競技だと捉えたほうが、伸びも速い。
フィンスイミングは「速さの競技」
競泳が「泳法の美しさ+速さ」を両立させる競技だとすれば、フィンスイミングはよりシンプルに水中での速さを追求する競技だ。モノフィンでたどりつく人間最速の水中移動は、一度体験すると忘れられない感覚になる。
日本ではまだ競技者層が広いとはいえないぶん、参入したスイマーが国内トップに近い位置に早くたどり着きやすい、という側面もある。興味を持ったら、JUSFの公式情報と国内大会の観戦から入るのが、全体像をつかむ近道だ。
参考リンク
- JUSF フィンスイミング紹介
- JUSF 大会日程
- JUSF 大会記録
- SwimHub内: フィンスイミング日本記録 / 記録・基準タイム