
平泳ぎは手をかいても進まない?プルの広がりと前への戻し方を見直す
平泳ぎで手を大きく広げても、そのぶん前へ進んでいる感じがしない。かき終わるころには腕が身体の横に残り、前へ戻すためにもうひと仕事が必要になる。そんなときは、腕力を足す前に、広げた手がどこで向きを変え、どう前へ戻るかを見てみましょう。
正面の映像は手の広がりを見るのに向き、横の映像は身体に対する手の前後位置を追うのに向きます。一つの角度でプル全体を判断せず、かく動きから前へ戻す動きまでを続けて確認します。
正面では手の広がり、横からはかき終わりを見る
撮影できる施設や練習会で、撮影者や周囲の了承を得て行います。水面上からでは手が隠れることもあるので、見えていない位置を推測で補わないようにしてください。
正面からは、手が外へ広がる場面と、内側へ向きを変える場面を追います。左右の手が映像上でどう動いているか、片方だけ見切れていないかも確認します。斜めから撮った映像では近い側が大きく見えるため、見た目の幅だけで左右差を決めません。
横からは、かき終わった手が頭・胸・腰に対してどこにあるか、その後に前へ戻るまで止まっていないかを見ます。肩の高さや姿勢は泳ぎの中で変わるので、「手が肩の線を越えたら全部間違い」という判定はしません。

正面と横では、見える情報が異なります。図は観察方向の説明で、手の幅・深さ・関節角度の正解を示したものではありません。横の矢印は、かき終わりから手を前へ戻す方向を示します。
最初は「外へ大きく広げている」「胸の近くで手が一度止まっている」など、映像で確かめたことだけを書きます。「抵抗が何割増えた」「水を逃したから遅い」といった力の説明は、普通の動画だけでは測れません。
手に水が当たる感覚だけで、プルの効果は決められない
手に強く水が当たっていても、25m全体の進み方がよくなったとは限りません。プルの後には腕を前へ戻す動作とキックが続くため、かいている一瞬の感覚だけでは泳ぎ全体を評価できないからです。
男性の平泳ぎ選手9人が、最大努力とそれより抑えた条件で25mを泳いだ研究では、腕の動きを三次元で分析しています。抑えた条件ではストローク頻度が低く、伸びの時間が長いなど、腕の各局面に違いがありました。腕を戻すときの手の速度も異なっています。GourgoulisとNikodelisの研究要旨
これはプルの幅を広げる練習の効果を調べた実験ではありません。「大きくかけば速くなる」「小さくかけば楽になる」のどちらも、この研究だけでは決められません。自分の比較でも、幅に加えて戻し方や泳ぐペースを見ます。
また、25mのストローク数と、単位時間あたりのストローク頻度は別です。回数が減ってもタイムが遅くなったなら、それだけでプルが効率的になったとは判断できません。数え方をそろえるときは、ストローク数の測り方を参考にしてください。
腕を後ろまでかくより、前へ戻るつながりを確かめる
USMSのプル解説は、手を後ろへ引き続けると前へ戻す動きが難しくなること、かく動きの中から回復動作へつなげることを説明しています。USMSの平泳ぎ・プル解説
そこで、かき終わりの映像をゆっくり再生し、手が身体の横から大きく回り道をしていないか、胸の前に集まった後で待っていないかを見ます。「もっと後ろまで押そう」と意識したときだけ戻しにくくなるなら、かく範囲を少し控え、前へ戻る流れを比べる候補になります。
ただし、腕を戻す速さだけを競う練習にはしません。急いで手を寄せた結果、呼吸が取りにくくなったり、かく感覚がなくなったりしたら、その速さを維持する必要はありません。
競技規則上も、通常の平泳ぎのかきでは、手をヒップラインより後ろへ引くことはできません。スタート後と折り返し後の最初のひとかきには例外があります。これは反則になる範囲の規則であって、全員に最適なプルの大きさを指定するものではありません。日本マスターズ水泳協会・競泳競技規則(第7条3)
普段の平泳ぎで、かく範囲だけを変えて比べる
25mを余裕を持って泳げる人なら、十分に休みながら次の比較ができます。これは編集部が考えた観察例で、決まった効果を保証するメニューではありません。
一本目は普段どおりに泳ぎ、タイムとストローク数を残します。撮影できる場合は、手が外から内へ向きを変える場面と、かき終わった後の戻りを記録します。
次の一本では、後ろへ大きくかき込もうとする意識を弱めます。手の幅・キックの強さ・テンポを一度に変えず、呼吸もいつもどおり続けてください。壁で休んだ時間も残し、道具や蹴り出しの条件をそろえます。
比べたいのは、手が前へ戻りやすくなったか、かいている感覚が失われていないか、タイムと本人のきつさがどう変わったかです。一回の手動計測の小さな差だけで優劣を決めず、後日の練習でも同じ感覚になるかを確かめます。
手の向きによって水の圧の感じ方がどう変わるかを確かめたい場合は、スカーリングのやり方も使えます。
腕だけで泳ぐ練習やプルブイを使う練習は、姿勢や脚の動きが普段と変わります。道具を使う場合は別の条件として記録し、その結果を通常の平泳ぎへ戻して確認してください。
手が戻っているのに進まないときは、キックとのつながりを見る
プルの戻りが続いていても、その直後にキックと腕がかみ合わないことがあります。次に見るのは、キックが始まったときの腕と、足を閉じたときの手の位置です。具体的なコマの選び方は平泳ぎの手足のタイミングへ進んでください。
呼吸後に上体が起きたまま残る場合は、平泳ぎの呼吸後に腰が沈む原因で顔と腕の戻りを確認します。何本か泳いだ後にだけ戻りが遅くなるなら、平泳ぎですぐ疲れるときの練習調整が先になる場合もあります。
「手をかいても進まない」という感覚を、手の広がり、かき終わり、前への戻りに分けて残すと、指導者へ相談するときも具体的になります。幅を大きくする前に、次の動作へつながっているかまで見てみましょう。


