「もっと伸びて泳ぎましょう」

水泳をやっていると、一度は言われたことがあると思います。ストローク数を減らす、遠くの水をつかむ、ひとかきで進む。どれも大事です。

ただ、ストローク数を減らすことだけを目的にすると、泳ぎが遅くなることがあります。

なぜなら、泳ぐ速さはざっくり言えば、1回のストロークで進む距離と、1分間にどれだけストロークを回せるかの組み合わせで決まるからです。

先に短く言うと、ストローク数を減らすことは大事ですが、それだけでは速さは決まりません。1回で進む距離と、レース速度で回せるピッチの両方を見ないと、「伸びているけど遅い」泳ぎになることがあります。

速さは「伸び」と「ピッチ」のかけ算

競泳のレース分析では、泳速度、ストローク頻度、1ストロークあたりの距離の関係が古くから調べられています。

ものすごく単純化すると、速く泳ぐには次の2つが必要です。

  • 1回のストロークでしっかり進むこと
  • そのストロークをレース速度で回せること

どちらか片方だけでは足りません。

大きく伸びても、ピッチが落ちすぎれば速度は上がりません。逆に、ピッチだけ上げても、水を押せずに空回りすれば、疲れるだけで進みません。

だから「ストローク数が少ないから良い泳ぎ」とは限らないわけです。

ストローク長とピッチの違いを2人のスイマーで表したイラスト

ストローク数が減っても遅くなることがある

練習で25mのストローク数を数えるのは、とても良いチェックです。

ただし、その時にタイムを見ないと判断を間違えます。

例えば、25mを12ストロークで泳げたとしても、タイムが大きく落ちていたら、それはレースで使える泳ぎとは言いにくいです。単に止まりながら長く伸びているだけかもしれません。

逆に、ストローク数が少し増えても、タイムが上がり、最後まで水をつかめているなら、その泳ぎの方がレース向きの場合もあります。

見るべきなのは、ストローク数だけではなく、次の組み合わせです。

  • タイム
  • ストローク数
  • 呼吸の乱れ
  • 後半の失速
  • キャッチの抜け
  • テンポを上げた時の姿勢

このセットで見ると、「伸びているけれど遅い」のか、「ピッチが上がっていても進んでいる」のかが見えやすくなります。

伸びを作る練習と、回す練習は別

泳ぎを直す時は、伸びを作る練習と、ピッチを上げる練習を分けて考えると扱いやすいです。

ドリルやゆっくりしたスイムでは、キャッチの位置、身体の向き、重心移動、入水の静かさを確認できます。ここではストローク数を減らす意識が役に立ちます。

一方で、レースに近いスピードでは、同じ伸びをそのまま保つのは難しくなります。テンポが上がった時に、キャッチが浅くならないか、肘が落ちないか、呼吸で頭が上がらないかを確認する必要があります。

ゆっくり泳いで良いフォームができることと、速く泳いでも崩れないことは、似ているようで別の能力です。

自分の「使えるピッチ」を探す

ピッチを上げる練習では、ただ腕を速く回せばよいわけではありません。

水を逃がさずに回せる範囲を探すことが大切です。

例えば、25mを数本泳ぎながら、少しずつテンポを上げていく。タイムは上がっているか。ストローク数はどれくらい増えるか。水を押す感覚は残っているか。後半で急に空回りしていないか。

こうやって見ると、自分にとっての「ちょうど良いテンポ」が見えてきます。

レースでは、最初から最大ピッチにする必要はありません。むしろ、前半で水を逃がさず、後半にテンポを上げられる方が実戦的なこともあります。

まとめ

ストローク数を減らすことは、泳ぎを見直す良い入口です。

ただし、ストローク数だけを追いかけると、止まりながら伸びる泳ぎになってしまうことがあります。

速さは、ストローク長とピッチの組み合わせです。大きく進むこと。レースのテンポでそれを回すこと。その両方がそろって、はじめて泳速につながります。

練習では、ストローク数とタイムをセットで見る。ゆっくりしたフォーム確認と、レース速度での再現を分けて考える。

「少ないストロークで泳げたか」だけでなく、「速いテンポでも水を逃がさなかったか」を見ていきたいですね。

よくある質問

ストローク数が少ないほど速い泳ぎですか?

必ずしもそうではありません。ストローク数が少なくても、ピッチが落ちすぎてタイムが遅くなるならレース向きとは言いにくいです。速さは、1回のストロークで進む距離と、そのストロークをどれくらいのテンポで回せるかの組み合わせで決まります。

練習では何を測るとよいですか?

ストローク数だけでなく、タイムとセットで見るのがおすすめです。25mや50mで、タイム、ストローク数、呼吸の乱れ、後半の失速を一緒に確認すると、伸びているのか、止まっているのか、空回りしているのかが分かりやすくなります。

参考文献