
テーパーはサボりじゃない?レース前に量を落とす意味
大事な試合が近づくと、練習量を落とすことがあります。
いわゆるテーパーです。
でも、練習量が減ると不安になる人も多いと思います。「泳がないと感覚が落ちそう」「追い込んでいないと弱くなりそう」「休んでいるだけでいいのかな」と感じるのは自然です。
ただ、テーパーはサボる期間ではありません。
レースに向けて疲労を抜きながら、必要なスピード感や水の感覚を残すための調整期間です。
先に短く言うと、テーパーは完全に休む期間ではなく、疲労を抜きながらレースの鋭さを残す期間です。量は落としても、短いスピード刺激やスタート・ターンの感覚は残す方が実戦につながりやすくなります。
テーパーで狙うのは疲労と調子の入れ替え
普段の練習では、強くなるために負荷をかけます。
その負荷によって体力や技術は伸びますが、同時に疲労もたまります。疲労が残ったままレースに出ると、本来の力を出し切れないことがあります。
テーパーでは、練習の刺激を完全になくすのではなく、疲労が抜けるように練習量を調整します。
イメージとしては、次のような状態を目指します。
- 身体の重さが抜ける
- レース速度の感覚は残っている
- スタートやターンの鋭さが落ちていない
- 水をつかむ感覚が鈍っていない
- レース前の不安で余計に泳ぎすぎない
休むだけではなく、レースに必要な感覚を残す。ここがテーパーの難しさです。

量を落としても、強度は残す
テーパー研究では、練習量を落とす一方で、強度は保つことが重要だと整理されています。
ここでいう強度は、毎日きつい練習を続けるという意味ではありません。レースに必要な速度や神経系の鋭さを、短い距離で確認するという意味に近いです。
例えば、テーパー中にずっとゆっくり泳ぐだけだと、身体は楽になりますが、レース速度への入り方が鈍ることがあります。
逆に、不安だからといってレース直前まで長いメインセットを重ねると、疲労が抜けません。
だから、量は減らす。けれど、短く速い刺激や、スタート、浮き上がり、ターンの確認は残す。このバランスが大事になります。
「平均3%」を自分に当てはめすぎない
複数の研究をまとめた分析では、テーパーによるパフォーマンス改善は平均で約3%と報告されています。
3%という数字だけ見ると大きく感じます。100mで1分00秒なら、単純計算で2秒近い差になります。
ただし、この数字をそのまま全員に当てはめるのは危険です。対象競技、選手レベル、テーパー前の疲労、練習内容、種目によって結果は変わります。
大切なのは、「テーパーにはパフォーマンスを引き出す余地がある」という見方です。
練習で作った力を、レース当日に出せる状態に近づける。そのために量、強度、頻度、休息を調整する。テーパーは、そのための計画です。
テーパーで泳ぎすぎる理由
レース前に泳ぎすぎてしまう理由は、だいたい不安です。
身体が軽くなってくると、「練習が足りないのでは」と感じることがあります。水の感覚が少し違うだけで、「このままではまずい」と思って追加で泳ぎたくなることもあります。
でも、テーパー期の違和感は、必ずしも悪いサインではありません。
疲労が抜けて身体が軽くなると、普段と感覚が変わります。そこで慌てて量を戻すと、せっかく抜けかけた疲労をまた積んでしまいます。
不安になった時ほど、確認する項目を絞る方が良さそうです。
- 今日の水の感覚はどうか
- レース速度に1本だけ触れたか
- ターン後の浮き上がりは合っているか
- 呼吸で力んでいないか
- 終わった後に疲れすぎていないか
「安心するまで泳ぐ」ではなく、「必要な確認ができたら終える」。これがテーパー期には大事です。
まとめ
テーパーは、練習をサボる期間ではありません。
これまで積んだ練習をレースで出すために、疲労を抜きながら、必要なスピード感と泳ぎの感覚を残す期間です。
量は落とす。強度は短く残す。確認項目を絞る。不安で泳ぎすぎない。
このあたりを決めておくと、レース前の数日を少し落ち着いて過ごせます。
「まだ練習しなきゃ」ではなく、「当日に出すために整える」。テーパーは、そう考えると使いやすくなります。
よくある質問
テーパー中は完全に休んだ方がいいですか?
完全に休むことが常に正解とは限りません。テーパーでは練習量を落として疲労を抜きつつ、レースに必要なスピード感や水の感覚を残すことが大切です。短いレースペース刺激、スタート、ターン、浮き上がりの確認は残した方が実戦につながりやすいです。
レース前に不安で泳ぎたくなったらどうすればいいですか?
不安を消すために量を増やすと、疲労が戻ることがあります。まずは確認項目を絞り、1本だけレース速度に触れる、ターン後の浮き上がりを確認する、水のつかみを確かめる、くらいに留めるのが現実的です。安心するまで泳ぐより、必要な確認ができたら終える方がテーパーらしい使い方です。
参考文献
- Bosquet L, Montpetit J, Arvisais D, Mujika I. Effects of Tapering on Performance. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2007.
- Mujika I, Padilla S. Scientific Bases for Precompetition Tapering Strategies. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2003.


