
ウォームアップは何を残す?レース前の整え方
レース前のウォームアップ、どれくらいやるのが正解なのでしょうか。
泳ぎ足りないと身体が重い。けれど、泳ぎすぎると本番前に疲れてしまう。大会会場ではアッププールが混んでいたり、招集からレースまで時間が空いたりして、思った通りに整えられないこともあります。
ウォームアップは、ただ身体を温める時間ではありません。水の感覚、呼吸のリズム、レース速度への入り方を、レース直前の身体に思い出させる準備だと考えると整理しやすくなります。
競泳を対象にしたレビューでも、ウォームアップはパフォーマンスに関わる可能性があり、内容や待ち時間の設計が重要だと整理されています。
先に短く言うと、ウォームアップは疲れるためではなく、レースで使う感覚を残すための時間です。身体を温めるだけでなく、水のつかみ、呼吸、レーステンポ、浮き上がりを短く確認できると、本番に入りやすくなります。
「たくさん泳ぐ」より「何を残すか」
レース前のアップでまず考えたいのは、疲労をためることではなく、レースで使う感覚を残すことです。
軽く泳いで身体を動かし、水に乗る感覚をつくる。そこから、数本だけレースに近いテンポを入れる。最後にスタート、浮き上がり、ターンなど、自分が崩れやすい場所を確認する。
この流れだと、アップの目的がはっきりします。
- 身体を冷えた状態から動ける状態にする
- 呼吸と心拍を少し上げておく
- 水をつかむ感覚を確認する
- レース速度に近いテンポを短く入れる
- スタートや浮き上がりの最初の動きを思い出す
逆に、アップでメイン練習のように追い込みすぎると、本番に残したい鋭さまで削ってしまうことがあります。

待ち時間で感覚は薄れやすい
大会では、アップ直後にすぐ泳げるとは限りません。
招集、着替え、待機、前の組の進行。気づけばアップから20分以上たっていることもあります。研究でも、ウォームアップ後の休息時間が100m自由形のタイムトライアルに影響するかを調べた報告があります。
ここで大事なのは、何分が絶対に正解という話ではありません。会場や種目、選手のタイプによって変わります。
ただ、アップで作った感覚は、待っているうちに少しずつ薄れていくと考えた方が実用的です。だからこそ、レース前に身体を冷やしすぎない、軽く動かす、肩や股関節を固めない、スタート前に呼吸を整える、といった小さな準備が意味を持ちます。
短距離ほど「鋭さ」を残したい
50mや100mでは、レースの入りで身体が鈍いと取り返しにくくなります。
だからといって、アップで何本も全力に近い泳ぎを入れる必要はありません。むしろ、短い距離で「レースのテンポに触れる」くらいの方が扱いやすいです。
例えば、アップの最後に次のような確認を入れるイメージです。
- 15mだけレーステンポで泳ぐ
- スタートから浮き上がりだけ確認する
- ターン後のドルフィンとひとかき目だけ確認する
- 呼吸のタイミングを1本だけ合わせる
全力を出し切るのではなく、レースで使うスイッチを軽く入れておく。短距離のウォームアップは、この感覚が大切になりそうです。
長距離でもアップは必要
長めの種目では、短距離ほど爆発的な入りは必要ないかもしれません。
それでも、身体が冷えたまま入ると、最初の数百メートルでリズムをつくるまでに時間がかかります。特に自由形や個人メドレーでは、前半で力みすぎる、呼吸が浅くなる、ターン後にリズムが遅れるなど、入りの不安定さが後半に響くことがあります。
長距離のアップでは、全力の刺激よりも、いつものテンポに自然に入れることが大切です。
「今日は前半を落ち着いて入る」 「呼吸を急がない」 「ターン後の3ストロークを丁寧にする」
こうした確認を、アップの中で1つだけ入れておくと、レースの最初が少し落ち着きます。
まとめ
ウォームアップは、たくさん泳いだ人が勝つための時間ではありません。
レースで使う身体の状態、水の感覚、テンポ、呼吸を、疲労を増やしすぎずに整える時間です。
アップで何を残したいのか。スピード感なのか、浮き上がりなのか、呼吸なのか、最初のキャッチなのか。そこを決めておくと、アップはただの習慣ではなく、レースの一部になります。
大会当日は、完璧なアップができないこともあります。だからこそ、自分にとって最低限必要な確認を知っておくことが大事ですね。
よくある質問
ウォームアップはレースの何分前までに終えるべきですか?
全員に共通する正解はありません。種目、会場、招集時間、身体の冷えやすさで変わります。大事なのは、アップで作った感覚が待ち時間で薄れすぎないようにすることです。長く待つ場合は、身体を冷やさず、肩や股関節を軽く動かしておく方が使いやすいです。
レース前のアップではどれくらい速く泳ぐべきですか?
疲れるほど追い込む必要はありません。短い距離でレースに近いテンポを少し入れ、水のつかみ、呼吸、浮き上がり、最初の数ストロークを確認するくらいが現実的です。短距離ほど、長い量よりも鋭さを残すことを優先したいです。
参考文献
- Neiva HP, Marques MC, Barbosa TM, Izquierdo M, Marinho DA. Warm-Up and Performance in Competitive Swimming. Sports Medicine. 2014.
- Neiva HP, Marques MC, Barbosa TM, Izquierdo M, Viana JL, Teixeira AM, Marinho DA. Does Warm-Up Have a Beneficial Effect on 100-m Freestyle?. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2014.
- West DJ, Dietzig BM, Bracken RM, Cunningham DJ, Crewther BT, Cook CJ, Kilduff LP. Effects of 10min vs. 20min passive rest after warm-up on 100m freestyle time-trial performance. Journal of Science and Medicine in Sport. 2017.


