水中ドルフィンでは進んでいるのに、浮き上がると急に泳ぎが詰まる。回数を増やす前に、最後のキックから最初のかき、その後の水面の泳ぎまでを続けて確認します。

長く潜れたことと、壁から先へ速く進めたことは同じではありません。ここでは、普段から水中ドルフィンを行っている人の、クロールの壁蹴り後を例に、浮き上がりを見直す方法を紹介します。背泳ぎやバタフライへ、腕の動かし方をそのまま当てはめる説明ではありません。

回数を決める前に、浮き上がった後まで見る

同じ回数を蹴っても、浮き上がる場所や、その後の泳ぎは変わります。壁の蹴り方、姿勢、最初のかきが違えば、回数だけを比べても何がよかったのか分かりません。

競技経験のある男性30人を対象に、4泳法の壁蹴りから25mを撮影した研究では、水中から水面へ移る局面の姿勢や手足の協調と、泳速度との関係が調べられました。関係する項目は泳法によって異なり、成人スイマー全員に共通する回数を決めた研究ではありません。Stosicらの研究

また、エリートの短水路100m自由形を分析した研究では、競技水準によって水中区間の距離や速度に違いがありました。ただし、速い選手の特徴を観察した結果から、自分も潜る距離を伸ばせば速くなるとは言えません。Plaらの研究

練習では、浮き上がり地点だけで動画を止めず、水面に出た後の数かきまで見ます。回数をそろえても、そこでリズムが途切れていれば、つなぎ方を確かめる余地があります。

最後のキック・最初のかき・水面の泳ぎを続けて撮る

撮影が認められた場所で、コーチや協力者に横から撮ってもらいます。水中と水面の両方が見える映像が理想ですが、見えない部分を推測で補わないようにします。水上だけの動画では、足や手が動き始めた瞬間を特定できない場合があります。

最後のキック、最初のかき、水面の泳ぎを順に観察する3つの場面。キックと腕の動きが離れていないか、浮上後にリズムが乱れないかを確認する図

番号と矢印は動画を見る順序です。脚・手・ゴーグルは観察場面のアイコンで、全身の姿勢や動作間隔の正解を示していません。キックと腕の動きには重なりもあります。

見る場面映像で確認すること
最後のキックの前後脚の動きが止まってから、腕を動かすまで待っていないか
最初のかき頭だけを急に上げていないか。手を動かし始める深さはどうか
水面に出た後腕とキックが普段のクロールにつながるか。呼吸を含めてリズムが乱れないか

これらは観察の項目です。一つ当てはまっただけで、抵抗や失速の原因を断定するものではありません。気になった場面をコーチと共有し、次の一本で変える点を一つに絞ります。

例えば、脚も腕も動かない間が見えるなら、その間を短くする意識で試す。最初のかきで急に頭を持ち上げているなら、普段より早く水面の泳ぎへ移る条件を相談する。両方を一度に直そうとせず、動画で確認できたことから始めます。

壁蹴りと道具をそろえ、25mの到着まで比べる

浮き上がりを変えたら、同じ地点までの時間も残します。25mプールなら、壁蹴りから反対側へのタッチまでが一つの区切りになります。25mを水中で進む練習ではなく、早い段階で浮上し、普段どおり呼吸しながら泳ぐ計測です。

条件は「クロール/壁蹴り/道具なし/25m/同程度の努力感」など、そろえられる範囲で決めます。スタート合図から測るのか、足が壁を離れたところから測るのかも統一してください。壁蹴りと飛び込みのタイムの扱いで説明しているように、出発条件が変わった記録は分けます。

比較は、普段の浮き上がりと、コーチと決めた「同じ回数でつなぎを変える」または「少ない回数で早く浮く」条件から始めます。回数を順に増やし、息を止められる限界を探す方法にはしません。

記録するなら、次の項目があれば見返せます。

  • 水中キックの回数と、頭が水面へ出たおおよその場所
  • 壁から25m到着までの時間と、計測の始点
  • 浮上直後に止まる感じがあったか、水面の泳ぎへつながったか
  • 呼吸の余裕、休息、道具の有無

一本のわずかな差だけで採用を決めず、疲れが少ない別の機会にも同じ条件で確かめます。手動計時では、押すタイミングのずれも結果に入ります。映像がある場合も、見えない位置を無理に数値化しないようにします。

15mは競技の上限で、潜る目標距離ではない

日本マスターズ水泳協会の2026年6月版規則では、自由形・背泳ぎ・バタフライのスタート後とターン後は、壁から15m地点までに頭が水面上へ出ている必要があります。平泳ぎの水中動作は別の規定です。競泳競技規則

この15mは、毎回そこまで潜るよう求める距離でも、安全に息を止められる距離の保証でもありません。呼吸が必要なら浮上し、施設の潜水制限と指導者の指示に従います。

USA Swimming掲載の共同啓発資料でも、過換気、長い息止め、水中での距離や時間の競争を避け、必要なときに呼吸することや適切な監督を求めています。浮き上がりの確認でも、繰り返し大きく呼吸して潜る、息苦しさを我慢する、一人で潜水距離に挑戦するといった方法は取りません。低酸素による意識消失の啓発資料

壁を離れた姿勢と、ターン全体は分けて直す

浮き上がりの前に姿勢が崩れているなら、ストリームラインの作り方へ戻って確認します。一方、ターンからの一本だけうまくいかない場合は、壁に入る位置や蹴り出しの条件も変わっています。ターンの壁接触時間と蹴り出しと分けて観察すると、修正点を絞れます。

フィンを使う場合は、なしの記録と混ぜず、道具ありの別の練習として扱います。

次の練習で残すのは「何回増やせたか」だけではありません。最後のキックから最初のかきがつながり、その後も自分のクロールを続けられたか。25mの時間と映像を合わせて、自分の浮き上がりを見直しましょう。