バタフライで入水するたびに深く沈み、次に腕を戻すときは水面へよじ登るようになる。「うねりが大きい」と言われたら、身体を一枚の板のように固める前に、どの場面で、身体のどこが大きく上下しているかを見てみましょう。

横から撮った動画なら、入水後に肩が深く下がるのか、呼吸で上体が高く上がるのかを分けて見られます。うねりの幅を小さくすること自体を目標にせず、普段の呼吸を続けながら前へ泳ぎやすくなるかを確かめます。

入水後に沈むのか、呼吸で高く上がるのかを分けて見る

「上下動が大きい」だけでは、直す動作を決められません。動画を普通の速さで一度見てから、入水と呼吸の場面を止めて確認します。

気になる場面動画で見るところ次に比べたい動き
入水後に深く潜る肩が水面からどれくらい下がり、その後どう戻るか胸を下へ押し込もうとする意識を弱める
呼吸のたびに大きく上がる肩が上がる時期と、顔を前へ出す時期が合っているか肩の上がりに合わせて呼吸動作を始める
後半になると上下動が増える最初と後半で、腕を戻す動きや息継ぎがどう変わるか距離や本数を減らして同じ場面を見直す

右欄は観察した後に試す候補です。動画の見た目だけで原因を確定したり、三つとも一度に変えたりする必要はありません。呼吸がきっかけで沈む場合の詳しい確認は、バタフライの呼吸で身体が沈む原因にまとめています。

呼吸動作を始める時期と、実際に息を吸える時期も区別してください。肩が上がる流れに合わせて顔を出し、口が水面上に出てから吸います。「早く吸おう」と、水中で吸い始める意味ではありません。

横から肩・腰・足首を追い、前への移動も一緒に見る

撮影できる施設や練習会で、撮影者と周囲の了承を得て行います。泳者を追いながらカメラを上下に動かすと、身体と水面の位置関係が分かりにくくなります。できれば横からカメラを固定し、同じ画面内に身体全体が入る区間を使ってください。

横から撮った映像に水面の線を置き、肩・腰・足首の上下と前への移動を見る観察図

横から撮った動画を見るための模式図です。点は肩・腰・足首の目印、矢印は観察する方向を示します。身体を矢印の方向へ動かす指示や、理想のうねり幅を示すものではありません。

最初は、泳ぎが落ち着いている二周期ほどで十分です。両手が入水した場面から、次の同じ入水までを一周期として見ます。肩が最も深くなる場面、腰の位置が変わる場面、足首が上下する場面で動画を止めると、どこを大きく動かしているかを共有しやすくなります。

同時に、水面やプールの背景に対して身体がどれくらい前へ移動したかも見ます。ただし、一台の斜めの動画から正確な速度や抵抗を計算することはできません。撮影距離や向きが違う動画を並べ、「前より何cm深い」と決めつけないようにします。

肩が深く下がっていても、その一コマだけで「悪いフォーム」とは言えません。次の腕の戻りで引っかかっていないか、同じペースで泳いだときに負担が増えていないかまで確認します。腕が水面から抜けないときの見方も、この続きとして使えます。

上手な選手にも波があり、小さいほどよいとは言い切れない

エリートの男女各8人を調べた研究では、頭・肩・腰・膝・足首の上下動を分析し、身体を伝わる波の成分と泳速度との関連を検討しています。一方、身体の重心の上下動を最小にするように動作を合わせているという証拠は得られませんでした。Sandersらの研究要旨

これは、うねりを大きくすれば速くなるという結果でもありません。エリート選手の動きを測った研究であり、初心者が波の幅を変えたときに上達するかを試したものではないからです。

U.S. Masters Swimmingの技術ガイドも、上体を高く持ち上げることより、うねりとプルの時期を合わせることを説明しています。USMSのバタフライ・タイミング解説

自分の映像では、「身体全体をもっと波打たせる」「上下動を全部なくす」という大きな指示より、入水後の肩や呼吸の開始など、見える場面に絞るほうが変化を確かめやすくなります。

胸を押し込む意識を弱め、いつもの呼吸で比べる

入水後の沈み込みが気になった場合の比較例です。これは効果が確認された共通メニューではなく、動きの違いを見つけるための進め方です。

  1. 無理なく泳げる距離を、普段のバタフライで泳ぐ。呼吸の回数や仕方は普段どおりにする。
  2. 壁で休み、次は「胸を深く押し込もうとしない」ことだけを意識する。キックの強さやテンポまで同時に変えない。
  3. 同じ撮影位置で、入水後の肩の深さと、続く腕の戻りを比べる。泳いだ距離、タイム、実際の休息、きつさも残す。

25mを余裕を持って泳げる人なら、25mごとに壁で休んで比べられます。25mの後半に動作が崩れるなら、続けて泳げることを試す日にはせず、指導者のいる練習で無理のない距離にしてください。レーンの途中で急に立ち止まる比較は避けます。

肩の沈み込みが小さくなっても、身体を固めて腕が戻しにくくなったり、キックが合わせにくくなったりするなら、その意識を強める必要はありません。「浅く見える」と「泳ぎやすい」を別々に記録し、両方を見て判断します。

後半だけうねりが大きくなるなら、練習量も見直す

最初は泳げているのに後半で動きが変わるなら、フォームの意識だけでは説明しきれません。同じ動きを保てる距離で区切り、休息を入れたときにどうなるかを確かめます。毎回最後まで崩れた泳ぎを続ける必要はありません。

動画には「練習の何本目か」「直前に何を泳いだか」も添えておくと、元気なときの映像と疲れたときの映像を混同せずに済みます。負担の記録は水泳のRPEの使い方、距離や呼吸も含む見直しはバタフライですぐ疲れるときの練習調整を参考にしてください。

うねりは見た目の大きさだけで採点するものではありません。どこで沈み、どこで上がり、その後も前へ泳ぎ続けられるか。そこまで映像と感覚をそろえると、次に直したい場面がはっきりします。