クロールを泳ぐと、息が苦しくなるより先に腕が重くなる。後半は水をかくたびに力が要り、腕を前へ戻すのもつらい。腕の筋力を増やす前に、疲れ始める場面を確かめたいところです。

最初から力んでいるのか、息継ぎのたびに姿勢が変わるのか、長く泳いだ後だけ動きが崩れるのか。同じ「腕が疲れる」でも、練習で確かめることが変わります。

なお、ここで扱うのは運動中の重さや疲労感です。肩に痛みがある場合は、痛みを起こす泳ぎを続けず、悪化する・腕を動かしにくい場合は医療機関へ相談してください。NHSの肩痛ガイドも、悪化させる動作を避けるよう案内しています。

後半だけ腕が重くなるなら、前半のペースを確かめる

前半の25mを速く入りすぎると、その泳ぎを繰り返せるかが問題になります。まずは楽なクロールと、普段腕が疲れるペースの違いを見てください。原因を探すために、わざと限界まで泳ぐ必要はありません。

疲れを感じる場面確認したいこと
泳ぎ始めから腕が重い楽に泳ぐつもりでも、毎回強くかいていないか
呼吸するストロークで負担を感じる顔を上げたときに、前の腕や身体の向きがどう変わるか
距離を伸ばすと後半だけ重い前半の飛ばしすぎや、後半のタイム・動作の変化がないか
練習の本数を重ねると重い次の出発までの休息が減っていないか

たとえば、50mの後半から重くなるなら、同じ50mを少し抑えて入り、重くなり始める位置が変わるかを確認します。これは原因を断定するテストではなく、コーチへ伝える材料を増やす方法です。

毎本の休息がなくなっている場合は、フォームの修正だけでは設定が合いません。サークルに間に合わないときの調整方法を参考に、距離や出発間隔を相談してください。

呼吸中の姿勢と、腕を前へ戻す動きを見る

呼吸で顔を前へ持ち上げたり、脚が大きく下がったりしていないか。腕のかき方だけを見ていると、身体全体の変化を見落とします。

U.S. Masters Swimmingの姿勢・ローリングのガイドは、身体の位置が安定しないと、腕や脚が姿勢を支えるためにも働くと説明しています。また、身体の回転は、腕を水上で前へ戻す動きを助けます。

動画では、呼吸する瞬間と、口を水中へ戻した後を続けて見ます。前の腕で水を下へ押して顔を持ち上げようとしていないか、胴体をほとんど回さず腕だけを高く持ち上げようとしていないかが確認の候補です。

ただし、大きく回転すればよいという話でもありません。腕を戻しやすい範囲とタイミングは体格や可動域で変わります。角度を無理にそろえず、コーチに普段の泳ぎを見てもらいます。息継ぎのときだけ沈む場合は、クロールの呼吸と姿勢の見直し方から確認できます。

プルブイで楽になっても、筋力不足とは判断できない

プルブイを使うと腕が楽になる人も、かえって重く感じる人もいます。ブイの有無では、キックだけでなく身体の浮き方も変わります。通常泳とのタイム差から、腕の筋力だけを判定することはできません。

プルブイを使わない状態と、腿の間にプルブイを挟んだ状態を比べる用具の図

用具の有無を比べる模式図です。腰から腿の部分だけを描き、腕やキックの動き、泳いでいるときの姿勢は省略しています。プルブイの使用可否は施設のルールに従います。

USMSの初心者向け用具ガイドでも、プルブイは腿の間に挟み、キックを使わずに下半身を浮かせて、腕の動作に集中する用具として説明されています。

研究でも、腕と脚の役割は切り離しすぎないほうがよさそうです。オーストラリアの国内大会レベルの選手20人が、ストローク頻度をそろえて200mを泳いだ比較では、腕のみの条件の泳速は全身泳より約11%低くなりました。Morrisらの研究概要

ただし、これは選手の泳速を比べた研究で、腕の疲れを治す方法の試験ではありません。「強くキックすれば腕が疲れない」「ブイで速くなる人は筋力がない」といった結論には使えません。

用具を使うなら、普段のクロールとブイありの短い泳ぎで、腕の重さ・呼吸のしやすさ・身体の位置を比べる程度にします。ブイありで楽になった場合も、外した通常泳でどこを変えるかまで確かめてください。

ストローク数を減らすために、前で待ち続けない

少ない回数で泳ごうとして、前に伸ばした手を長く止めていないでしょうか。毎回のかき始めに力が要ると感じるなら、回数を減らすことだけを目標にしないほうが確認しやすくなります。

USMSのクロールガイドは、左右の腕を切り替えるタイミングには個人差があると説明しています。前の手を残す泳ぎ自体が間違いではなく、一定の秒数だけ待てば正解というものでもありません。

同じ距離を泳いだとき、ストローク数が減っていても、タイムが大きく落ちて腕の負担が増えていれば、狙った改善とは違います。数え方をそろえたうえで、ストローク数と計測区間をタイムと一緒に記録しましょう。

動きを変えたら、同じ距離で腕の重さを比べる

「もっと強くかく」を試す前に、楽に泳ぐ距離を決め、呼吸や腕の戻しを確認します。25mでもよく、50mを無理なく泳げる人は50mでも構いません。出発方法、泳法、用具、休息をそろえ、変えた部分をメモします。

20人を対象にした4×50mのクロール研究では、速度低下とともに複数の筋活動が変わり、最後の50mでは一部の筋活動が増えました。Ikutaらの研究概要 これは筋活動を測った研究で、見た目から特定の筋肉の弱さを判定する方法を確かめたものではありません。

そのため、観察するなら腕が動かなくなった最後の場面だけでなく、まだ余裕があるときの泳ぎも残します。撮影は施設の許可を確認し、同じ向きから比べてください。

タイムが同じで、腕が重くなるのが遅くなった。呼吸のたびに腕を力ませる感じが減った。そうした変化を練習記録に残すと、次にコーチへ見てもらう場面が具体的になります。

参考文献・資料