
ターンは壁を早く離れればいい?接地時間の話
自由形のターンでよく言われるのが、「壁にいる時間を短くしよう」という話です。
たしかに、壁で止まっている時間が長いと、レース全体のタイムには響きます。特に短水路ではターン回数が多いので、ターンのうまさがかなり大きくなります。
ただ、壁を早く離れることだけを意識すると、押し出しが弱くなったり、姿勢がほどけたりすることがあります。
先に短く言うと、ターンは「壁を早く離れる」だけでは足りません。壁に入る前の速度、身体をコンパクトにたたむ動き、壁を押す方向、けのび姿勢までをセットで見る必要があります。
壁にいる時間は大事。でも単独では見ない
自由形のタンブルターンを調べた研究では、足が壁に触れている時間と、身体をどれだけ小さくたためているかが、ターン後5mまでのタイムにどう関わるかを検討しています。
壁接地時間は、足が壁に触れてから離れるまでの時間です。短いほどよさそうに見えますが、そこだけを削ろうとすると、十分に力を出せないまま離れてしまうことがあります。
タックインデックスは、ざっくり言えば身体をどれだけコンパクトにたためているかを見る指標です。身体をたたむのが遅い、膝が開く、回転が大きくなる。こうした小さなロスが、壁に入る前後の速度に影響します。
つまり、ターンは「接地時間を短くする競技」ではなく、「速度を落とさずに方向転換する技術」として見たいところです。

早く離れても、遅くなるターンがある
壁を早く離れたのに、浮き上がりで遅い。練習中にこういうターンは意外とあります。
原因として考えられるのは、次のような動きです。
- 壁に入る前に減速している
- 回転が大きくなりすぎている
- 足の位置が高すぎる、または低すぎる
- 壁を上や下に押している
- けのび姿勢がすぐにほどける
- 水中キックを打つ前に身体が沈む
この場合、壁接地時間だけを見ても原因はわかりません。壁を離れる前後の姿勢まで見た方が、実際の改善につながります。
練習では「壁の前後」をセットで撮る
ターン練習では、壁だけをアップで見るより、壁の5m前から5m後までを撮る方が使いやすいです。
壁に近づく時にストロークが詰まっていないか。最後のひとかきで頭が上がっていないか。回転で膝が大きく開いていないか。壁を蹴った直後に身体が反っていないか。浮き上がりのひとかき目が慌てていないか。
このあたりを見ると、「ターンが遅い」の中身が分かれてきます。
接地時間を短くするのは大事です。ただし、短くするために押し出しが弱くなるなら、結果として損をすることもあります。
まとめ
ターンは、壁を早く離れれば終わりではありません。
壁に入る前の速度を落とさないこと。身体をコンパクトにたたむこと。壁を押す方向をそろえること。押し出し後にストリームラインを保つこと。
この一連の流れがよくなると、壁接地時間だけでなく、壁後の速度も見えやすくなります。
特に短水路では、ターンは何度も出てきます。1回あたりの小さなロスが、レース全体では大きな差になります。壁の瞬間だけでなく、壁の前後をセットで見直したいですね。
よくある質問
壁接地時間は短いほどいいですか?
短いことは有利に働く可能性がありますが、単純に短ければよいとは言い切れません。壁を十分に押せず、姿勢も崩れるなら、壁後の速度を失います。接地時間と押し出しの質をセットで見たいです。
ターンが苦手な時は何から見ればいいですか?
まずは壁の5m前から5m後までを動画で見るのがおすすめです。壁に入る前に減速しているのか、回転で時間を使っているのか、壁後の姿勢でロスしているのかを分けると、練習内容を決めやすくなります。
参考文献
- David S, Grove T, Duijven Mv, Koster P, Beek PJ. Improving tumble turn performance in swimming—the impact of wall contact time and tuck index. Frontiers in Sports and Active Living. 2022.


