泳いでいて苦しくなると、まず呼吸が気になります。

息が吸えない。吐けない。呼吸のタイミングが遅れる。顔を上げたくなる。ラストで呼吸が増える。

でも、呼吸の乱れは、呼吸だけの問題ではないかもしれません。苦しくなった時に、ストロークのピッチが変わる、伸びがなくなる、身体が左右にぶれる、キャッチが浅くなる。そう感じたことがある人も多いと思います。

競泳の研究でも、吸気筋疲労が呼吸頻度、ストロークレート、ストローク長に影響する可能性が報告されています。

先に短く言うと、呼吸が乱れると、ストロークのテンポや長さも乱れることがあります。息を我慢する強さより、呼吸しても頭を上げすぎず、キャッチやキックのリズムを崩さないことが大事です。

呼吸も泳ぎの一部

自由形では、呼吸のたびに身体の向きが変わります。

顔を上げすぎると腰が落ちやすくなり、横を向きすぎると身体が開きやすくなります。呼吸を急ぐと、入水やキャッチのタイミングもズレます。

つまり、呼吸は酸素を取り込む動作であると同時に、フォームのリズムを作る動作でもあります。

呼吸が乱れると、次のような変化が出やすくなります。

  • 頭が上がる
  • 身体のローリングが大きくなる
  • キャッチが浅くなる
  • キックが止まりやすくなる
  • ストロークのテンポが不安定になる
  • 後半で左右差が出る

苦しい時に泳ぎが乱れるのは、気持ちが弱いからだけではありません。呼吸まわりの疲労が、泳ぎのリズムに影響している可能性があります。

呼吸のタイミングとストロークのリズムを表したスイマーのイラスト

吸う力も疲れる

呼吸で使う筋肉も、運動中に疲労します。

200m自由形を扱った研究では、息を吸う筋肉の疲労が、呼吸回数、腕を回すテンポ、1ストロークで進む距離に影響することが報告されています。別の研究でも、200mを泳いだ後に吸う筋肉の疲労が確認されています。

ここで大事なのは、「呼吸筋を鍛えれば全部解決」という単純な話ではないことです。

むしろ、呼吸が疲れてくると、泳ぎ全体のリズムに波及する可能性がある、と考える方が実用的です。

苦しくなった時にフォームが乱れるなら、出力だけでなく、呼吸のタイミング、吐き方、顔の戻し方、呼吸後のキャッチまで見直す価値があります。

息を我慢する練習とは分けて考える

呼吸の話になると、すぐに「息を我慢する練習」に寄りがちです。

ただ、ここは分けて考えたいところです。呼吸筋疲労や呼吸リズムの研究から、「無理な息止めをすれば速くなる」とは言えません。

特に水中での過度な息こらえは危険です。ひとりで無理に行うべきではありません。

この記事で扱いたいのは、息を我慢する強さではなく、呼吸しても泳ぎのリズムを壊さない技術です。

  • 水中で吐けているか
  • 呼吸前に慌てていないか
  • 顔を上げずに横で吸えているか
  • 呼吸後の入水が雑になっていないか
  • 苦しい時ほどキックが止まっていないか

こうした確認の方が、日々の練習には使いやすいと思います。

練習では「呼吸した時の泳ぎ」を見る

フォーム練習では、呼吸なしの数ストロークだけを見ればきれいに泳げることがあります。

でも、レースでは呼吸が入ります。特に100m以上では、呼吸をしながら速度を保つ必要があります。

だから練習では、呼吸した瞬間の泳ぎを見ることが大切です。

例えば、25mを同じテンポで泳ぎながら、呼吸した直後のキャッチが抜けていないかを確認する。50mの後半で、呼吸のたびに頭が上がっていないかを見る。呼吸回数を変えた時に、タイムだけでなくストローク数や姿勢も見る。

このようにすると、単に「苦しい」ではなく、どこで泳ぎが崩れているかが見えやすくなります。

まとめ

呼吸が乱れると、泳ぎも乱れます。

それは気合いの問題だけではなく、呼吸筋疲労や呼吸動作が、ストロークのリズムや姿勢に影響している可能性があるからです。

大切なのは、息を我慢することではありません。呼吸しても頭を上げすぎないこと。呼吸後にキャッチを外さないこと。苦しくなってもテンポと姿勢を保つこと。

呼吸は、泳ぎの邪魔ものではなく、泳ぎの一部です。

練習では「どれだけ呼吸を減らせるか」だけでなく、「呼吸しても泳ぎが崩れないか」を見ていきたいですね。

よくある質問

呼吸回数が多いと遅くなりますか?

呼吸回数が多いこと自体が必ず悪いわけではありません。問題は、呼吸のたびに頭が上がる、キャッチが抜ける、キックが止まるなど、泳ぎのリズムが崩れることです。呼吸を減らすより、呼吸しても姿勢とストロークを保てるかを見る方が実用的です。

息を我慢する練習をした方がいいですか?

無理な息こらえ練習はおすすめしません。特に水中での過度な息止めは危険です。この記事で扱っているのは、息を我慢する強さではなく、呼吸してもフォームを崩さない技術です。水中で吐けているか、呼吸後の入水やキャッチが雑になっていないかを確認したいです。

参考文献