水泳は、汗をかいている感覚がわかりにくいスポーツです。

ランニングや陸トレなら、シャツが濡れたり、汗が流れたりして「そろそろ飲まないと」と気づきやすい。でもプールでは、口の中も体も水で濡れています。のどの渇きに気づいた頃には、すでに集中力が落ちていることもあります。

だからといって、毎回スポーツドリンクを飲めばいいわけでもありません。軽い練習なら水で十分な日もありますし、暑い日や長めの練習では、塩分や糖質を少し入れたほうが扱いやすいこともあります。

水泳の水分補給は、「何が一番いいか」よりも、今日の練習に何が足りないかで考えるほうが現実的です。

水泳の水分補給を、練習条件ごとに4つに分けて説明する図解。
水、スポーツドリンク、電解質飲料は、練習時間・暑さ・強度・レース間隔で使い分ける。

まずは水でいい日と、足したほうがいい日を分ける

水分補給で迷ったら、最初に練習の強度と時間を見ます。

練習の状況まず考える飲み物見るポイント
30〜45分の軽いスイムのどの渇き、練習後のだるさ
60分前後の通常練習水、または薄めのスポーツドリンク汗をかきやすい日か、メニューがきついか
暑い日、屋外プール、強度の高い練習スポーツドリンクなど塩分を含む飲み物休憩の頻度、体重減少、足つり感
大会・記録会でレース間が長い日水分と補食をセットで考える胃の重さ、次のレースまでの時間
体調不良、めまい、吐き気がある日運動を止める判断を優先飲み物だけで解決しようとしない

日本スポーツ協会は、暑いときには水分と同時に塩分も失われるため、スポーツドリンクなどで0.1〜0.2%程度の塩分補給を目安にする考え方を示しています。また、運動による体重減少が2%を超えないように補給することも目安になります。

この数字は「毎回その通りに飲む」という意味ではありません。自分の汗の量や体調を見ながら、足りているかを確かめるための目安です。

プールでも脱水と熱中症は起こる

「水の中にいるから大丈夫」と思いやすいですが、プールでも熱中症は起こります。

スポーツ庁の資料でも、プールでは口の中が水で濡れるため、のどの渇きを感じにくく、水分補給を忘れやすいことが指摘されています。屋外プールでは日光と気温、屋内プールでは湿度や換気の悪さも関係します。

特に注意したいのは、次のような日です。

  • 屋外プールで日差しが強い
  • 屋内プールでも湿度が高く、空気がこもっている
  • メインセットが長く、心拍が上がる
  • 夏の初めで、まだ暑さに慣れていない
  • 前日から睡眠不足、下痢、発熱、疲労感がある

環境省の暑さ指数(WBGT)では、危険度が上がるほど休憩や水分・塩分補給の頻度を増やし、条件によっては運動を中止する考え方が示されています。プール練習でも、暑さが強い日は「今日はどれだけ追い込むか」より、「今日は続けていい条件か」を先に見たいです。

水、スポーツドリンク、電解質飲料は役割が違う

水は、短い練習や軽めの日には使いやすいです。余計な糖質が入らず、飲みやすい。普段の練習でまず用意するなら、水で十分な場面は多いです。

スポーツドリンクは、水分に加えて糖質とナトリウムなどの電解質を一緒に入れられるのが特徴です。Australian Institute of Sportは、スポーツドリンクを「水分補給とエネルギー補給を同時に行うための飲み物」と整理しています。代表的な設計では、糖質とナトリウムのバランスを見ながら、運動中や運動後に使います。

電解質飲料やタブレットは、糖質をあまり入れずに塩分などを足したいときに使いやすい場合があります。ただし、塩分だけを足せばよいわけではありません。長い練習や試合日では、エネルギー不足も別に起こります。

ざっくり分けると、こうです。

飲み物向きやすい場面注意点
軽い練習、短時間、普段の補給暑い日や長時間では塩分が不足することがある
スポーツドリンク暑い日、長めの練習、強度が高い日毎回多く飲むと糖質過多になりやすい
電解質系の飲料汗が多い日、糖質を控えたい日エネルギー補給には別の食事や補食が必要
経口補水液脱水が疑われる時などの備え普段の練習用ドリンクとして常用するものではない

市販品の名前だけで選ぶより、「水分を入れたいのか」「塩分も必要なのか」「糖質も必要なのか」を分けると、選びやすくなります。

アイソトニックかハイポトニックかで悩みすぎない

スポーツドリンクを調べると、アイソトニック、ハイポトニックという言葉が出てきます。

細かく見ると違いはありますが、普段のスイマーが最初に見るべきなのは、商品名よりも練習の状況です。軽いスイムで毎回糖質入りの飲み物を入れる必要はありません。逆に、暑い日の長いメニューで水だけにするのも合わないことがあります。

実際の使い分けは、このくらいで十分です。

状況判断
45分以内で軽い水でよいことが多い
60分以上、またはメインがきついスポーツドリンクを候補に入れる
暑い、汗が多い、足がつりやすい塩分を含む補給を考える
レース間が長い飲み物だけでなく補食もセットで見る
胃が重い、甘さがつらい薄める、量を減らす、別の補給方法を試す

大会当日に初めての飲み物を試すのは避けたいです。味、甘さ、胃の残り方は個人差があります。使うなら、まず普段の練習で試しておくほうが安全です。

プールサイドに置くなら、飲むタイミングまで決めておく

水分補給は、ボトルを持ってきただけでは足りません。

練習に集中していると、ボトルがプールサイドにあるのにほとんど飲まないことがあります。特にサークル練習では、休憩が短くて後回しになりがちです。

おすすめは、飲むタイミングを先に決めておくことです。

  • アップ後に一口
  • メイン前に一口
  • メインの途中で、まとまった休憩があるときに一口
  • ダウン前後で一口

大量に一気飲みするより、練習の切れ目で少しずつ飲むほうが続けやすいです。スポーツ庁の資料でも、激しい運動では30分に1回程度の休憩が望ましいとされています。実際の水泳練習ではメニュー構成によって休憩の形が変わるので、「どこで飲めるか」をメニューの中に置いておくと忘れにくくなります。

練習後は、体重とだるさで振り返る

練習後に毎回細かく計算する必要はありません。

ただ、夏場や長い練習の時期だけでも、練習前後の体重を見ておくと、自分がどれくらい水分を失いやすいか分かります。体重が大きく落ちているなら、練習中の補給が足りていないかもしれません。

次の日までだるさが残る、頭が重い、足がつりやすい。こうした感覚が続くなら、メニューだけでなく補給も見直したいところです。

一方で、飲みすぎも雑に考えないほうがいいです。水分を大量に入れれば入れるほど良い、という話ではありません。のどの渇き、尿の色、体重変化、練習中の集中力。いくつかのサインを合わせて、自分のパターンを探します。

SwimHubとしての考え方

水泳の水分補給は、特別な飲み物探しではありません。

短い練習なら水で足りることが多い。暑い日、長い練習、強度が高い日は、塩分や糖質も考える。大会日は、飲み物と補食を別々に考えず、レース間の時間で組み立てる。

このくらいに分けると、かなり迷いにくくなります。

試合日の食事まで含めて整えたい人は、水泳の試合前日と当日の食事 も合わせて見てください。普段の練習量との関係を見たい場合は、プールは週何回行けばいい?水泳のセット練習メニュー例 にもつながります。

練習の質は、泳いでいる時間だけで決まるわけではありません。飲む、休む、戻す。そこまで含めて、次の1本を少し楽にする準備です。

参考リンク