力を抜いてゆっくり泳いでいるはずなのに、なぜか25mで苦しくなる。少しテンポを上げたほうが、身体が浮いて楽に進む。そんな感覚は珍しくありません。

ゆっくり泳ぐことと、腕を長く止めることは別です。速度を落としたときに推進の切れ目が長くなると、一回ごとに進み直す感覚が強くなります。

先に短く言うと、見るのは次の3点です。

  • 前の手が止まり、身体の速度が大きく落ちていないか
  • テンポを下げたぶん、ひとかきを強くしていないか
  • キックと呼吸まで止まり、姿勢が崩れていないか

クロールをゆっくり泳ぐときの速度、テンポ、ストロークの関係

「ゆっくり」と「止まる」を分ける

まず、楽に泳げるテンポで25mを泳ぎます。次に、腕の回転だけを意識して遅くした25mと比べます。

タイム、ストローク数、呼吸回数、主観的なきつさを記録します。ストローク数が減っても、楽になったとは限りません。

テンポは1分間のストローク数で表せますが、最初は厳密に測らなくても構いません。動画で、手が前に止まる時間を見るだけでも差が分かります。

ゆっくり泳ぐと苦しくなる3つの理由

1. ひとかきの中で速度が落ちすぎる

クロールの速度は、ひとかきの間でも一定ではありません。水を押す場面と、次の腕へ移る場面で上下します。

上級者7人と初心者9人が4段階の速度で泳いだ研究では、初心者はすべての速度で、一周期内の速度変動が上級者より大きくなりました。

腕の連携指標には、上級者と初心者の明確な差がありませんでした。前で待つ時間だけで、速度変動を説明できなかったということです。

ゆっくり泳いで苦しいときは、待ち時間に加え、入水、キャッチ、キックまで含めて速度が落ちる場所を見ます。

2. 速度を落とすと腕のつなぎ方も変わる

泳ぐ速度が変われば、ストローク頻度だけでなく、左右の腕が推進を受け渡すタイミングも変わります。

競泳選手が複数の速度で泳いだ研究では、速度の上昇に合わせて腕の連携が変化しました。速い泳ぎでは、左右の推進時間が重なる方向へ移ります。

反対に速度を落としたとき、前の手を残す時間が増えることがあります。それ自体は間違いではありません。

ただし、手を残したまま身体が止まり、次のひとかきだけ強くなるなら、テンポの落とし幅が大きすぎる可能性があります。

3. テンポだけ下げ、全身のリズムが切れる

国内大会レベルの競泳選手20人が低・中・高のストローク頻度で200mを泳いだ研究では、頻度が上がるほどキック数も増えました。

キックとストロークの比率は大きく変わらず、腕と脚のリズムが一緒に調整されていました。

これは、全員が速いテンポで泳ぐべきという意味ではありません。腕だけ遅くして、脚や呼吸とのつながりが切れていないかを見る材料です。

楽なテンポは一つではない

短距離のテンポと、長く泳ぐときのテンポは同じでなくて構いません。体格、技術、目的の距離でも変わります。

「大きくゆっくり」が合う人もいれば、少し細かく回したほうが姿勢を保ちやすい人もいます。研究から全員共通の回数は決められません。

大切なのは、ゆっくりにした結果、力みと速度変動が増えていないかです。

25mで3つのテンポを比べる

  1. 普段の楽なテンポ
    タイム、ストローク数、きつさを記録します。
  2. 少し遅いテンポ
    前の手が止まる時間とキックを見ます。
  3. 少し速いテンポ
    力まず姿勢を保てるか確認します。

各25mの間は十分に休みます。最も速い条件ではなく、呼吸と姿勢を保ったまま楽に泳げた範囲を探します。

まとめ

クロールをゆっくり泳いで苦しいときは、体力不足と決めつけず、テンポの落とし方を見ます。

  • 前で待つ間に身体が止まっていないか
  • 次のひとかきだけ強くなっていないか
  • キックと呼吸のリズムまで切れていないか

ストローク数の少なさだけを目標にせず、タイムときつさも一緒に記録します。

よくある質問

ストローク数は少ないほど効率がよいですか?

少ないだけでは判断できません。長く進めても、前で止まりすぎたり、ひとかきを強くしすぎたりすることがあります。タイムと主観的なきつさも一緒に見ます。

テンポを上げるとすぐ疲れませんか?

上げすぎれば疲れます。ここで比べるのは、普段よりわずかに速い範囲です。呼吸と姿勢を保ち、腕の力みが増えないところを探します。

参考文献